196人が本棚に入れています
本棚に追加
ぼこっ
ぼこっ
ぼこっ…
何度も何度も 男の悲鳴、体が壊れる音が辺りに響く。
トドメと言わんばかりに、真島は鉄パイプを大きく振りかぶった。
ニヤリといやらしい笑みを浮かべ、それを男の頭を狙って 振り下ろす。
…けれどそれは、桐生の手によって止められた。「…その辺で」
真島は桐生の手を睨み、桐生の顔を見て怒鳴った。
「…お前の為にやっとんのやろがぁ!」
それを聞いた桐生は、首を横に振り、目を細め、
「もう、十分ですから。」
と言って、真島の手を離した。
「…ほォ…」
真島は桐生を睨む。
そして、にかっと笑うと 何時もの声色に戻り、手を下ろした。
「…ま、ええわ。」
鉄パイプを道の端に投げ捨てると、片手をズボンのポケットに突っ込んで話す。
「お前も『子』持ったら、これくらい厳しく躾せなアカンでぇ?」
…それは、これから組を立ち上げる桐生に対しての、“兄さん”からの言葉だった。
真島は最後に桐生を睨むと、男に蹴りを入れて 立ち去った。
男は脇腹を押さえつつ立ち上がり、真島の背中を追った。
『…何をされても…親に付いて行くんだな。』
男の背中を見送ると、桐生は自分の目的地に急いだ。
最初のコメントを投稿しよう!