196人が本棚に入れています
本棚に追加
静かなリズムを刻む曲が流れるバー、セレナの店内に、桐生は足を踏み入れる。
そこにいたのは、一人の客と、女性店員一人だけだった。
桐生は店内を見回し、その女性店員に笑いながら
「相変わらず静かだなぁ」
と話す。
女性店員は棚から一本のボトルを取り出し、コップに大きめに砕かれた氷を入れ、ボトルの中身を入れた。
そして桐生に反論し、皮肉紛いのことを言う。
「あなた達が居ちゃ、怖くて飲めないでしょ?普通のお客さん。」
彼女は麗奈。
ここ、『セレナ』のオーナーをやっている。
桐生とは10年近くの付き合いだ。
桐生はそれを聞いて笑い、店内を見渡した。
「麗奈、由美は?」
麗奈は桐生の質問に淡々と答える。
「今買い出し行ってるの。
どうせまた、“腹減った”とか言い出すんでしょ?」
それを聞いた一人の客は笑い、桐生と顔を見合わせて言った。
「違いねぇ」
この男性客は錦山彰。
東城会直系堂島組構成員だ。
桐生とは幼なじみで、お互い同じ孤児院で育った。
桐生は錦山の隣に座り、麗奈からコップを受け取ると それを一口含んだ。
錦山はそれを見ると、自分も酒を飲み 桐生に話しかけた。
「…どうなんだ?桐生組の立ち上げは?」
「まだ決まった訳じゃない。
…組長が決めることだ。」
カランと、氷が崩れた音が鳴る。
最初のコメントを投稿しよう!