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錦山は「はっ」っと笑い、椅子を回転させ桐生に体を向け、そして 桐生に指を突きだして言う。
「組長も嫌とは言えねぇよ
風間の親父がその気なんだ。
堂島組は、あの人で持ってるようなモンだからな。」
錦山は、自分の組の頭にあたる“堂島組長”の陰口を続けている。
実際、本人の前でその事を言ったら “エンコ”だけじゃ済まない話だ。
錦山は まだ堂島組長の事を話す。
酒が入ったことで 普段言えない愚痴を吐いているのだろうが、桐生は喋るのを止めさせた。
「控えろ、錦。」
錦山ははっとなり、体をカウンターにむき直した。
そしてまだ酒が入っているグラスを一気に飲み干し、 溜め息をついた。
「…また お前に先越されちまったか…」
錦山は、麗奈に新しい酒を注文する。
そうすると麗奈は慣れた手つきでボトルの蓋を開け、新しいグラスと氷の中にそれを注ぐ。
30秒も掛からない内に、麗奈は注文された品を錦山に差し出した。
※エンコ…極道の業界用語で、「小指」の事。
極道同士でケジメを付ける時、「エンコをつめる」と言うが、それは「小指を切る」という意味。
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