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この女性は由美。 セレナで働くホステスで、桐生達と同じ孤児院で育った。
桐生達が上京したと同時に、後を追ってここ、神室町に来た。
由美は袋をカウンターの上に置き、桐生と錦山の間に立った。
そして、二人の手に握られているグラスを見ると言った。
「ちょっと!もう酔ってるの?私も入れなさいっ!」
桐生は そう言った由美に席を空け、もう一つ椅子を用意した。
「どうぞご遠慮なく。」
麗奈はグラスに酒を用意した。
由美は笑い グラスを受け取って一口飲む。
久々の 親友たちと過ごす時間は 淡々と過ぎていく。
笑いが絶えないこの幸せな時間が過ぎないことを願っても、それは叶わない願い。
けれど、少しでも、少しだけでも、長く続くように願う。
この時間だけが、自分が進んだ血生臭い道を忘れられるのだ。
その時、ふと桐生は由美の薬指を見た。
キラリと輝く赤い宝石がはまった指輪が、そこにはあった。
桐生の目線が指輪に向いていると気付いた由美は、桐生の顔を見て微笑む。
桐生はそれに返すように笑った。
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