第一章

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数時間後… 10月1日 午後4時 堅い感触が 顔に感じる。 カウンターに突っ伏して寝ていた桐生は、麗奈がボトルを片付ける音で目を覚ました。 眠い目の目頭を抑え、桐生は体を起こす。 麗奈は桐生が起きたのに気付くと、声をかける。 「おはよう、桐生ちゃん。 疲れてたの?随分寝たわね。」 桐生は服の跡が付いた頬をさすりながら 辺りを見回した。 そこには…桐生と麗奈以外の人間は居なかった。 桐生は麗奈に聞いた。 「錦はどうした?」 麗奈は乾いたグラスのクスミを タオルで磨きながら答えた。 「錦山君なら、もうとっくに出かけたわよ。 “一馬には負けてられないから”…なんて言って張り切ってたわ。」 「そうか…今何時だ?」 そう言われて麗奈は、自分の腕に付いている腕時計を見た。 「もう4時ね。そろそろ風間さんの所に行かないと駄目なんじゃないの?」 桐生は目をこすった。
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