第一章

2/36
前へ
/37ページ
次へ
1995年10月1日 午後5時47分 色とりどりのネオンが輝く夜の街、神室町。 急に降ってきた雨に、人々は困りつつも、傘を差したり、飲食店で雨宿りをしたりと自分なりに対応する。 ………地面に打ちつけられる雨の音に混じり、パトカーのサイレンの音が街に響き渡っていた。 …あるビルの一室-- 電気は付いてなく、真っ暗な部屋だ。 時折光る雷で、部屋全体が一瞬だけ照らされる。 …部屋には 赤いシャツの上にグレーのスーツを着た独りの男が、拳銃を片手に立っていた。 そして、その男の足元には… 頭部を中心的に撃ち抜かれた、小太りの男と、女性物の指輪が転がっていた。 男はその指輪を拾い上げ、内側に刻まれている人の名前らしきものを見た。 「……由美…」 その時、その部屋のドアが乱暴に開き、2人の警官が拳銃を構えて乗り込んできた。 警官は男に銃口を向け、「動くな!」と怒鳴る。 男はゆっくりと振り返り、穏やかな笑みをうかべた。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

196人が本棚に入れています
本棚に追加