第一章

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風間はアタッシュケースの中身を見るなり、桐生に向かって笑った。 「また、無茶したんじゃないだろうな?」 桐生はその問いかけに笑い、「いえ…」と返した。 風間は杖を使ってソファーに歩み寄り、柏木の横に座る。 杖を傍らに置いて、軽く桐生のに向かって身を乗り出して言った。 「一馬、お前が無茶すりゃ、下の連中の歯止めが利かなくなる。 元々暴れたいって奴らの集まりなんだからな。」 その言葉は、組長からの注意であり 父親からの注意でもあった。 そんな桐生と風間の会話に、柏木が横から口を挟む。 「桐生なら大丈夫ですよ。 分別のある男です。」 何故か柏木は得意気に話を続けた。 「…それにな、親父だって昔は、東城会一の『殺し屋』っつって…」 「柏木!!」 風間が柏木を睨む。 普段の風間からは想像出来ないような…刃物のように鋭く、今にでも突き刺さりそうな……眼。 柏木はそんな風間を見るなり、頭を下げた。 「…すんません。」 風間は柏木から目線を外して、部屋を出ていくように言った。 柏木はそれに直ぐ反応して、ソファーを立ち上がり 風間に向かって一礼すると、とぼとぼと部屋を後にした。
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