196人が本棚に入れています
本棚に追加
風間はアタッシュケースの中身を見るなり、桐生に向かって笑った。
「また、無茶したんじゃないだろうな?」
桐生はその問いかけに笑い、「いえ…」と返した。
風間は杖を使ってソファーに歩み寄り、柏木の横に座る。
杖を傍らに置いて、軽く桐生のに向かって身を乗り出して言った。
「一馬、お前が無茶すりゃ、下の連中の歯止めが利かなくなる。
元々暴れたいって奴らの集まりなんだからな。」
その言葉は、組長からの注意であり 父親からの注意でもあった。
そんな桐生と風間の会話に、柏木が横から口を挟む。
「桐生なら大丈夫ですよ。
分別のある男です。」
何故か柏木は得意気に話を続けた。
「…それにな、親父だって昔は、東城会一の『殺し屋』っつって…」
「柏木!!」
風間が柏木を睨む。
普段の風間からは想像出来ないような…刃物のように鋭く、今にでも突き刺さりそうな……眼。
柏木はそんな風間を見るなり、頭を下げた。
「…すんません。」
風間は柏木から目線を外して、部屋を出ていくように言った。
柏木はそれに直ぐ反応して、ソファーを立ち上がり 風間に向かって一礼すると、とぼとぼと部屋を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!