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柏木が出て行って、少しの間を置いた後、風間が微笑を浮かべて 桐生に言った。
「…しかし文字通りの子供だったお前に、組を任せる日が来るとはな…」
…桐生の両親は、桐生がまだ物心が付いていない時に他界した。
当然桐生自身も覚えていない。
だから桐生は、両親の代わりに自分をここまで育ててくれた風間の事を、深く尊敬、敬愛している。
桐生は風間のその言葉に恥ずかしながらも言った。
「親っさんが居なけりゃ、今の俺はありません。
…感謝しています。」
桐生は深々と 風間に向かって頭を下げる。
それを見た風間は笑い、「固くなるな」などと言った。
桐生は笑みを浮かべた。
風間は杖を手に取って立ち上がると、窓の方へ歩み寄り 外を見た。
「“ヒマワリ”には顔出してんのか?」
そう風間に聞かれた桐生は首を横に振り、口を開いた。
「いえ……最近は、錦も由美も行ってないみたいです。」
風間は振り返り、桐生に言った。
「たまには行ってやれ。
あそこの孤児院は、お前達の故郷みたいなもんだ。」
「えぇ…。」
その時、部屋のドアをノックする音が、辺りに響いた。
風間が「入れ」と言うと、風間組の構成員が電話の子機を手にして入ってきた。
「失礼します。
桐生さんにお電話です。
シンジさんからです。」
桐生はその名前を聞くと小首を傾げ、構成員から子機を受け取り、耳に当てた。
「俺だ。」
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