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「さて・・・俺も自分の仕事をするかな」
俺は一人そう呟くと、ブルペンのマウンドへと目をやった。
横須賀スタジアムのブルペンはスタンド下にあり、グラウンド側にカナ-辻バッテリー、外周側にリリーフエース・岡本-加納バッテリーが陣取る。
ちなみにこのブルペン、外周の窓から覗くことができ、カナがブルペンに入るや、そこそこの数のファンが窓に張り付き、やれ
「カナちゃん頑張れ!」
だの
「辻ちゃん可愛い!」
だの
「つーかヤらせ(ry」
などといった声がブルペンに投げかけられる。
カナはそんな声にいちいち応えつつ、熱の入った投げ込みを繰り返す。
対照的に、岡本は淡々と、ゆっくりとしたペースで投げ込んでいる 。
「投げ込みひとつとっても、キャリアの差は歴然か・・・」
俺はそう呟くと、カナの元へ歩み寄り、声を掛けてやった。
「ペース落とせ ! そんなんじゃ投げる前に潰れるぞ」
するとカナは、頬をぷくーと膨らませて、
「だって野村さん潰れたらすぐアタシでしょ !? 早く肩作っとかなくちゃ ! 」
と言って、聞く耳持たないふうに投げ込みを続ける。
まったく・・・
すると、
「御園生さん、仮にも深山さんは都市対抗出場チームのエースだったヒトですよ・・・聞く耳を持つ価値はあると思いますが」
隣で投げ込んでいた岡本が、そう口を開いた。
岡本・・・。
「まあ確かに知っての通り、プロでは大失敗しましたがね」
・・・一言多い。
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