残念な奴が倒せない

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1回裏。 マウンドには熱球倶楽部のNo.2・五月女豊彦(さおとめ とよひこ)が上がる。 右のややサイド気味のスリークゥオーターから繰り出される球の速さは・・・・・・ ・・・・・・正直言って頼りないですけど何か? まあここは、今は一塁側ベンチでなんか怒鳴ってる“残念な奴”の言葉を、そっくりそのまま返しておくとしよう。 「おいトヨ! 打たせとけ打たせとけ! あとで打撃陣が倍取り返してくれるからな!」 俺のその言葉に、マスクを被ったヒゲオヤジがニッカリと笑う。 まあ、炎上しそうになったらカナあるいは野村、そして岡本のリレーで鎮火すればいい。 そうこうしているまに、京極ガスのトップバッター、安藤が左打席に入る。 小技を使いそうな、いかにもこすっからい感じのするバッターだ。 五月女の初球。 慎重に、低目から入る。 「スットラーイック!」 まずはワンストライク。 五月女はホッとしたように球を受け取ると、福嶋のサインに頷き、右腕をしならせ、投げる。 ・・・・・・おいっ!! 放たれたのは、初球とは反対に高めに浮き上がった、どう考えても打ちごろの、半端な速さのストレート。 この美味しそうな球を、トップバッター・安藤は・・・・・・ 「・・・・・・スットラーイッ!!」 ・・・・・・平然と、見送った。 ? ? ?
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