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二回の表、熱球倶楽部の攻撃。
九番・堀江は例によって凡退するも、一番・銚子がレフト前ヒットで出塁。
二番・高橋がショートフライに倒れるも、三番・片平がセンターオーヴァーのツーベースを放ち、一点を追加。
スコアを 4-0 とし、なおもツーアウト二塁で四番・横谷。
・・・・・・ピッチャーフライでスリーアウトでしたとさ。
かわって二回の裏、京極ガスの攻撃。
あの “ 残念な四番 ” 木下藤吉が打席に入る。
締まりのない笑みを浮かべながら、くねくねとバットを揺らす構えは、不気味以外の何者でもない。
だが。
それ以上に不気味なのは ――
―― それだけせわしなく動いていながら、奴もまた一切のスイングをしてこなかったこと。
見送りの、三振。
去り際、 奴はキャッチャーの福嶋に一瞬、粘つくような視線を送ると、へらへら笑いながらダグアウトへと消えていった。
続く五番・竹中。
―― 見送りの、三振。
六番・蜂須賀。
―― 見送りの、三振。
スコアボード下段に二つ目の「 0 」が刻まれたと言うのに、奴らは焦りの色など一切見せず、不気味な笑みを浮かべながら、守備へ散ってゆく。
すると、スコアカードにずっと目を落としていた新浦が、突如、素っ頓狂な声を上げた。
「解ったぞ ! 奴ら ―― 最初の 3 イニング捨ててやがる !! 」
え ?
それ、どういうこと !?
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