白い蝶

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「君……怪我はないか」  しばらくして、黒服の男が現れた。長い髪を結っている。その上に黒のハット。まさに、黒づくめというやつだ。 「あ……貴方は……」 「ここの主だ。倉部という」  どうやら、ここは探偵事務所の空き部屋らしい。空き部屋というか、倉部さんが休憩する部屋なのだと教えてくれた。 「そんな……悪いです」 「いや、私に気を遣うな。休むといい。疲れただろう」  優しい言葉を掛けてくれる。父さんは、こんな風に言ってくれただろうか…… 「――すみません」 「食欲は? 無くても体に入れたほうがいい。ミルクでも温めよう」 「あ、はい……お願いします」  僕は深く頭を下げた。
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