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「帽子屋さんの話では今日、この世界を案内してくれる筈よ?だから貴方が出てきてくれた。そうではないの?夢魔。」
夢魔は首を傾げ、こう言った。
「そうか。アリスは"今も"帽子屋さんのお気に入り…だったね。アリスにとって、この世界で頼れるのは、帽子屋さん何だ。ボクはまだ、彼からは何も聞いてないよ。」
聞いてない…?
「じゃあどうして…」
と、聞こうとした私を遮って、彼はこう続けたわ。
「それに…今の君を、白ウサギや王様が知っているかな?……あ、女王や騎士は、どうやら君を覚えているね…。君は知らないどこかで、女王様気質の優しいお姉さんや、今の騎士の彼と遊んでいる筈でしょう?それは、思い出してるでしょ?アリス…」
そう、私に問いかけてきた彼。
ふと、何かを思い出した気がして、その記憶を無我夢中で追い掛けたわ。
あれは、何時の間にか眠ってしまっていた日の事。
私が初めて、この世界に来た時の、懐かしい記憶。
其処は、知らない何処か。
知らない、お姉さん。
知らない同い年で、名前のなかった少年。
現在の面影を少し残した、3歳上の帽子屋さん。
家族の事は思い出せないのにどうしてかしら?
その記憶については、幼き頃まで遡る。
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