Mad as Hatterー帽子屋ー

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カチャリと音がして、そちらを見ると、私の分の紅茶を帽子屋さんが煎れてくれたみたいで。 「紅茶は煎れ立てが丁度良いですから、飲んで下さいネ~」 「…ありがとう。」 そう言われて差し出された紅茶の色は、すごく薄い、薄黄緑色をしていたわ。 コクリと一口飲むと広がる紅茶の味。 これは…ハーブティー? 「ホッとするわ。ハーブティーかしら?」 と言うと 「よく解りましたネ。それよりまだ、眠りネズミの質問に答えてませんヨ?」 と言われた。 「私、自分の名前が"アリス"だったか分からないの。何かを忘れている気がするのよ。私はその何かを思い出せないの。それに"アリス"って呼ばれることに慣れているなんて、変なの…。」 と言うと帽子屋さんが 「アリスが"忘れたい"と思って居たから連れてきたんですよネ~。忘れていても構わないんですヨ?」 本当に忘れていても良いのかしら? 大切な事は覚えているのに。 思い出せないのは悪いことではないのだけれど。 「帽子屋さん…」 「ワタシは"アリス"と君を呼ぶのに慣れてしまったんですから、アリスのままでいて下さいネ…」 と言われた。 私は恥ずかしくなって俯くと、紅茶をとって飲む。 それはぬるくなっていた。
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