第壱夜 永久の棘~深紅の記憶

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「…肉まん!? 食べるわよ!」 奈智は目の色を変え肉まんに食らい付く。 俺はにっこりと笑いつつ、リュックからトンカチとノミを取出して奈智を拘束する鎖にノミをあててトンカチを力を込め振り下ろす。 「…そうしてたら可愛いのにな。 俺はもう捕われねぇよ…俺には夢もやらなきゃならねぇことがあるんだからな!」 部屋中にガンガンと鈍い金属音が響きわたった。 前半は恥ずかしくて小さな声で言ったから音にかき消され聞こえていないだろう…それでいい。 俺は素直じゃないし、心の中を見せたくない。 「…だから! そんなことをしたって壊せっこないのよ! この鎖は…」 奈智は肉まんを食べ終えたのか、大声で否定した。 やはり可愛くない…なぜこんなに否定するのか俺には解らない…やってみなければ分からないことはたくさんある。 「たとえ不可能であろうが俺は決して諦めるわけにはいかないんだよ! この鎖は必ずぶっ壊すんだからよ!」 俺は力を込めトンカチを振り下ろす。 鎖が破壊できらたら俺はまた変われるような気がしている…昔の純粋なままの俺以上に。 「ガキャン!」 変な音がして鎖を見ると少しばかり傷かついていた。 「…嘘!? 鎖に傷…翔、あんたは一体…」奈智はかなり驚いていたのか目を丸くして俺をみた。 「だから言ったろ? やらなきゃ分からね…おい! 待てよ。 消えるんじゃない!」 俺がにやりと格好つけながら笑った隙に赤い月はみるみる元の淡い白の月に戻っていく… 「やっぱり…ね。 でも、ありがとう…」 奈智は悲しい声を上げると最後に涙を瞳に溜めて笑顔でありがとうと言い残し消えて行った。 「…何がありがとうだよ! 結局…また助けられねぇじゃねぇかよ!」 俺は何もないぼろぼろの教室の中で叫んだ。 俺の声が響く中、奈智のありがとうの一言が脳内にこびりついた…俺は再び平和な闇に包まれた学校を後にした。 淡い月の光がやけに眩しく感じた…
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