主のいない箱

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今日は日曜日だ。 バイト先のカウンターも忙しくなる日だから、この日は早く行かなくちゃ行けない。 午前九時を半分過ぎた頃。いつもならまだ起きたばかりの頭を回転させて、受付カウンターに座る。 案の定、ひっきりなしにお客さんが来る。 駐車券の割引を。 ギフト券を。 玩具屋はどこ? これ使える? 沢山のお客さんを相手にしてたら、時間はもう二時を回っていた。 休憩に入っていたパートさんに後をお願いして俺も休憩に。 「柏?」 従業員用の入り口に入ろうとすると、後ろから名前を呼ばれた。 振り向いてその顔を見れば、汀のいるKamuiの幹部メンバー。 そういえば一度、一緒にご飯を食べたことがある。 「わ!驚いたー久しぶりだね!!」 「だな。久しぶり。おまえ此処で何してんの?」 「見ればわかるだろ?バイトだよー」 「あ、そっか」 懐かしくなってつい立ち話。 Kamuiは最近、また大きなグループになって、勢力を伸ばしてるらしい。 なんだか台風みたい。 けらけら笑って話していると、ふと彼の顔が陰った。 …もしかして、汀に何かあったのか…!? 「…なあ、柏。おまえ、すっげぇ痩せてっけど大丈夫なのか?」 …俺のことか。 心配そうに俺の全身を検分する彼に苦笑して、大丈夫だと告げる。 信じられないという顔。 本当に大丈夫なのに。 「…無理すんなよ」 大丈夫だと言い張る俺に、やっと(苦かったけど)笑顔を見せて彼は去って行った。 「さて、もう一仕事頑張ろ」 無茶しないでできる限り。 決め事はちゃんと守るよ。
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