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時空崩壊 -タイム・カタストロフ-
~Prologue~
有り得ない。
少年はそう思い、もう一度空を見上げた。
そこに浮かんでいたのは、流線型の黒い人型兵器。
ざっと見て、全長は5、6メートルというところか。
その黒い死に神はギラリと赤いモノ・アイを輝かせると、高層ビルが立ち並ぶ街を思うがままに破壊し始めた。
(嘘だろ?)
コンクリートやガラスの破片が豪雨のように飛び散り、地上にいる人々は悲鳴をあげながら逃げ惑う。
少年もまたその中の一人で、慌てて近くの裏路地へと駆け込んでいった。
「何なんだよ、いったい……」
無機質な冷たいコンクリートの壁にもたれかかると、少年は荒く息を吐き出しながら独りごちる。
――わけが分からなかった。
何故、突然空に人型兵器が現れたのか。
少年は混乱していたが、その時ふと目の前に少女がいたことに気付いた。
長い、天使の羽のような白い髪を持った、神秘的な雰囲気を纏った少女。
「私を、天国へ連れていってください」
少年と目があった時、陰りのある孤独な月のような瞳をして、少女はそう言った。
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