―ハイヒール―

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何かが背中にいた。 僕の背後に立つ、赤いハイヒールの何か。 足だけが外灯に照らされて確かに見えていた。 (はぁ…はぁ…はぁ…。) 自然と息が荒くなる。 ゆっくりと顔を上げた僕は…恐怖に震えながらも、ゆっくりと振り返る。 …………………。 誰もいない。 慌てて足元を見ても、赤いハイヒールの何かも無い。 (やはり…気のせいだったのだろうか。) 小さくため息をつき、溢れた汗を拭いながら、僕はまた家に向かって歩き始めた。 激しく鼓動する心臓を感じながら、僕は同棲している彼女に電話をした。 少しでも気を晴らしたかったからだ。 電話しながら歩き始めてから、ハイヒールの音は鳴る事は無かった。
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