祖国への思い

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私がまだ学生で、免許も無かった頃。 バイト先の3つ年上の男の人と、その男性に憧れる同級生、私の幼なじみで免許取り立ての男の子、私の妹の計5人で二台の車に分乗し、とある心霊スポットへ向かった。 何故二台かと言うと、まかり間違って霊的な影響で動か無くなっても帰宅できるようにと、いわゆる安全対策である。 それほど危険なスポットなのだ。 私が乗る車が先頭を走る。3つ上の彼は、近くまでは行ったことはあるが、その詳細な場所迄は解らないと言うのだ。でも何となく私は行ける気がしていた…。何故かはわからないがそんな気がしていたのだ。 現に近くまでは容易に行けたが、この辺だと言う彼も、イマイチ場所が特定できなかった。辺りは林に覆われ、細い砂利道が山の上の方まで続いている…。 街灯は全くかったのだが、ふと車の前方に人影が見えた。 よくみると、女の子と男の子が二人並んで手招きをしていたのだ…。 「手招きしてるよ…。きっとまだ先なんだよ。」私がポツリと呟くと、前に乗っていた二人がギョッ❗❗っとした顔で私を振り返った。「前見て運転しろよ…落ちるぞ…。」と、釘をさすと慌てて前を向いた。「なんか見えたんか?」運転していた彼が言った。「…だって前で手招きしてんじゃん。」私は、別にそれ自体は全く怖くなかったので、つらっと言った。 前に座る二人は一瞬顔を見合わせたが、また前を向いた。 暫く沈黙…。〈マズかった…?もしかして…〉内心言わなきゃ良かったと思ったが、一度口から出た言葉はもう消せない…。 しかし、彼女達の案内が無ければ多分その場に到達する事は出来無かっただろう。 それ程辺りは暗く、入口の道も小さく、非常に発見しずらかったのだ。 彼女達は、暫く私達の前を同じ速度で移動しながら手招きを続け、丘の上に出で間もなくスーッと吸い込まれるように右の林に消えたのだ。 「…あ…曲がったよ。きっともうちょっと先に右折できる道があるはずだよ。」 また言ってしまった…。車内に沈黙の重い空気が漂っている…。 入口が小さく、中は広くなっているようだったが、異常に攻撃的な霊気も感じられたので、あえて中に入ることはやめた。 きっと入ってきてほしくないと思っている霊体も数多く眠っているのだろう。
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