さみしい背中

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ぶしゅ。 なんだこれ。 あつくてじんじんする。 単純に言えば、痛い。 だらだらぼとぼと、身体から出て行ってしまう、赤。 数秒空を見上げ、次に地面に落ちた自分の腕を見下ろした。 熱い切り口とそれを交互に見つめ、切り落とされたのだと理解。 しかも肩からばっさりと。 腕がなくなると色々と不便だな、飯も食えやしない。なんて呑気な思考。 いや、飯を食えないというのは大層な事だから、別に呑気ではないかもしれない。 目の前に倒れるイミテーション。偽者とはいえ、それが愛する者の形をしていたものだから、若干遠慮がちに闘ってしまった。 相打ちで仕留めたものの、相手も手ぶらで逝く気はなかったらしく、俺の腕を大事そうに握り締めている。 どーすっかなぁ、とその赤い水溜まりに腰をおろした。 とりあえず止血かな。これ以上出ちゃったら、死ぬかもしんない。 瞬きすると、ふと、あの子の顔が脳裏に浮かんだ。
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