さみしい背中

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片方の腕に力を込めた。 いっぱいいっぱい包み込んで、このかたかたと震える小さな身体をあっためてやりたいのに、腕が片方しかないのが恨めしい。 「だいじょぶだいじょぶ。」 「説得力ねえって言ってんだろ。」 「は、はは。」 最早笑う気力もなく、掠れた声しか出ない。 ここに死に怯える者が2人。片方は自分の死に、片方は相手の死に。 どなたか救ってくださいませんか。 心の中で呟いてみたけど、何も現れやしない。現実なんてそんなもの。 「…せなかさむい。」 片方が震える声で呟いた。 「ごめんな、片腕しかないから。」 方ほうは瞳を閉じてつぶやいた さい後にぎゅう、とかタほうの腕で抱きしめテ 「ごめんな、ジタン」 さみしい背中 (君の両手に包まれないまま) どしゃ。 (きみがいたから、それほどこわくはなかった) さいごにみたのは、きみのぜつぼうにみちたかお →あとがき
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