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2つ目のケーキに手を出したところで、今まで黙ってこちらを見ているだけだった先輩が、よく飽きないねと口を挟んできた。オレは口の端にクリームなんか付けながら、にっこりと笑い返し、もくもくとケーキを口に運ぶ。上に乗せられた真っ赤なイチゴを頬張ればじんわりと甘く、少し惜しい気もしたけれど、もう一つ乗っていたイチゴを、やっぱりこちらを見ているだけの先輩の口に放り込んだ。しゃくり、と、先輩の咀嚼音が部屋に響いた。 「甘いよ」 「イチゴですからね。美味しいでしょ?」 「まぁ普通かな」 この「贅沢ショートケーキ」と名付けられたショートケーキにはぷっくりと丸いイチゴが本来なら一つ分のスペースに、寄り添うように二つも乗せられていた。その名の通り確かに贅沢である。 くすくすと笑っていると、先輩はオレの頭をクシャクシャとまるで犬にでもするかのように撫で回してから、食べ終わったアンティーク調の皿を片付け始めた。 「今日も美味しかったです」 「まぁ不味かったら二つも食べないよね」 「はは、そうですね」 オレは台所に入っていく先輩の背を目で追った。 窓から差す夕陽が、先輩の黒髪をより一層艶やかに映していた。 (綺麗…、)
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