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最初はよく働くやつだなぁ・・・なんて感じただけで、俺は趣味である人間観察の対象としてぐらいにしか見ていなかった。
天海華織主任への第一印象。
仕事をまじめにする女。
昼夜問わず走り回っていつでも全力投球。
その姿はかっこいい女。そんな彼女の働きっぷりを見て自分も負けてられないなって思った。
最初は女が先頭切って働くのが物珍しくて興味本位で観察していたのが、無意識に目で追ってる自分がいた事に気がついた。
だけど・・・アレを見てから俺の心臓は鷲掴みにされた。カッコイイ女から守ってやりたい女へと変わった瞬間。だけど俺にはどうする事も出来ない事も解っていた。
『NYに行って立て直してこい。』
これは会社命令だから逆らえない。
――――――
NYへ行く前日、会社に書類を忘れて取りに帰った夜だった。
暗い事務所から聞こえる鳴咽を噛み殺した泣き声。その声の主にそっと近付いて声をかけた。
「体調でも悪いのか?」
ピクンと肩が揺れたが、そいつは顔をあげなかったが、ただ黙って首を左右に振っただけ。
「誰かになんかされたのか?」
彼女は俺を視界に入れないように顔をあげた。
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