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ドキンッ
その横顔があまりにも儚くて綺麗で、俺の心臓の鼓動を早くするには充分だった。
いつもの勇ましい彼女はもうどこにもいない・・・。そしてただ一言小さな声で放った言葉が今でも頭の中に残っている。
『怖くなったの』
その言葉の意味が解らなくて聞き返した。
「どうして?」
しかしそれに答える事もなく、また彼女は涙を溜めてデスクに組んだ腕の上に顔を伏せてしまった。
無言のままただ空間には彼女の啜り泣く声が響く。ひとしきり泣いた後、一度も振り返る事なく
『ありがとう』
そのまま仮眠室に消えていった彼女を見送った。
俺は心に芽生えた小さな淡い恋心を日本に置いたまま、翌日NYに飛び立った。
だからもう良い相手でも見つけて辞めてると思ってた。
それなのに再び彼女と出会った。
その時の彼女は凛とした背筋に昔と変わらないパンツルックでヒールをカツカツ鳴らして歩いていた。その姿に釘付けになった俺に同僚が忠告してきた。
「あの女、本部の奴だってよ。あんな綺麗な顔して仕事の鬼だって有名だ。今回の企画も彼女が立ち上げたらしいけどな。あんな見てくれがいいだけの女やめとけやめとけ。」
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