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ただ一目惚れに近い状態で日本に置いて来たはずの恋心に再び火がついたのだ。
こっちを振り向いた時に見えた笑顔があの時に見た泣き顔とダブってまた心臓が飛び上がった。
平静を装いながら同僚に聞いてみた。
「あの本部の女って男いるのかなー?」
「さぁな。聞いた事ないぞ?だいたいあんなキツい女じゃ男なんか寄り付きやしねぇよ。」
そっか・・・と言った後、またあの仕事に全力投球の姿を目で追い掛けた。
「本部に戻りてえなぁ・・・。」
思わず漏らした言葉に同僚が発したのは異動願を出してみたら?という提案だった。
そうだな。なんて適当にその時は曖昧な返事をした。あれから何年の年月が経過したか解らないが、俺は彼女を訪ねた。
久々の日本に戻って来た俺は本部に入るなり名簿リストを開いた。目的の人物は総務主任という肩書がついていた。
「あら?あなたが来るなんて明日は嵐かしら?」
軽く笑う彼女には仮面がついている。彼女は独身と言って重役たちから色々情報を仕入れているが、その目的は自分の親父さんの人生をかけた弔いのためだ。
勿論これを知ってるのは俺だけ。中途採用の採用担当者だった俺だけに彼女の口から知らされた。
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