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そう俺が茶化せばYes!と持っていた右手のペンを左に振って、楽しそうに笑う彼女の背後に、爽やかな好青年が現れた。
「おっと!Mrs.キャシー?ダーリンがお迎えだぜ?」
「oh!Bob!」
彼女は持っていたペンを置いて立ち上がると俺に向けていた悪戯っ子の様な顔から一人の恋する女性の笑顔となった。
その純粋な笑顔のまま婚約者のボブに抱き着く。
「キャシー?何の話だい?」
「リョウに彼女できたの!」
外国人らしいオーバーなリアクションで説明するが、俺はそれを苦笑しながら訂正を入れた。
「おいおい、まだ決まった訳じゃないよ。俺の一方的な片思いさ。」
そう言って両手をあげて降参のポーズをとる。
「でもリョウはモテるから大丈夫だよ。な?!」
ボブは励まそうと語尾を強くしてキャシーに同意を求める。
「そうね。でも私はあなたにモテたいわぁ。」
「勿論、僕もだよ。」
そんな甘い言葉を囁き合いながら俺を忘れて二人だけの世界を作り出すボブとキャシーに一人だけ寒さを感じた。
結局、二人だけの世界のまま仲良く退社したのを見送ると、俺は再びデスクで仕事を再開した。
全ては彼女と会うためと思えば残業だって苦にならない。
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