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「……無駄な事だ。
もう、遅い。 もう、戻れない……」
シルエットに映し出された女性は、艶めかしく呟き、両手で顔を覆った。
「誰が来ても、同じこと」
――私は誰とも会いたくない。
ジョーカーに馬鹿にされようが、な。
「……ナイト、ナイトを此処へ!!」
立ち上がり、カーテンの隙間から白く美しい手が伸ばされた。
「はい」
ナイト、と呼ばれた男は、無表情の仮面で顔を半分多い隠している。
ナイトは跪くと、その白く細い手に口付ける。
「悪いが、兎を捕まえて来い。 奴より早く」
「畏まりました。捕まえましたら、女王様の元へ」
「頼む」
気品溢れ、気丈で凛々しい声で言った。
ナイトはその声に頷き、マントを翻し、腰の剣を抜きながら去って行った。
女王様は、誰にも顔をみせず、ひっそりと暮らしていた。
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