ある一室で

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「あたし、は…」 ああ、うまく声が出ない。 「お前、ずっと放心状態だったんだ。俺が車に詰め込んだ時も、抵抗しねーし。好都合っつーより、拍子抜けした」 男は、腕組みをしてドアにもたれ掛かる。 視界がかすんでよく見えないが、多分こちらを見ている。 「違い、ます。あたしは…」 「あ?」 「あたしは、正気になんか、なりません。いま生きている時点で、狂っているから…」
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