邂逅

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あったので、何も言わずにただぼうっと彼女の後姿を目にしながら考えていた。 髪の毛と肌以外は兎に角、赤やピンクと派手なセンス。 しかし彼女は奇妙にもそれがしっくり嵌まる様な、不思議な少女だった。 着ている物自体は派手でも、着ているところを見ても何故かあまり派手な感じもしない。 全体的にはどちらかというと地味な気もする。 派手な色でも、そればかりを集めると他者はそう感じなくなるのかもしれない。 「…………」 (でも、街中でこんな娘が歩いてたらきっと目立つよな。) と、牧山は思う。 外見も牧山の好みとは少々ずれるものの、十中八九、万人が可愛いと思う部類だ。 (――それにしても、色彩の赤い目ってのは実在するのか?) ふと、そんなことが牧山の頭を過ぎった。 色彩とは瞳を囲う目の内部の機関で、主に瞳の中へ入る光を調節する。 よく“瞳の色が違う”と言うが、あの表現は正確には間違い。 本当の瞳はただ孔があるだけで、色が違ったりしたら大事だ。 色が違うのは瞳を囲う色彩の方なのだ。 焦げ茶色や薄茶色は勿論、青や漆黒など、様々な色彩は実在するのは知っているが、“真紅の色彩”というのを彼は聞いたことがない。 赤い目というと…………。 「ショウジョウバエとかウサギとか……」 「?」 「…………」 偶々思いついたのを口に出してしまい、それを聴いた少女が振り返った。 が、牧山は知らん振りをしてごまかす。 「……?」 訳も分からずに少女はほんの少し眉を顰めてから、再度自販機と向かい合った。 未だに何にしようか決めかねているのか。 傍迷惑極まりないが、今の牧山はそんなことは失念していた。 (――服のセンスから考えればカラーコンタクトの筋も考えられる。 でも、もし髪と同じで天然のものだったとしたら?) ……少しでも暇があると、すぐこういう考えをしてしまう癖が牧山にはあった。 細かいことでも、推論や憶測をしたがる。 ……星の巡り合わせが違えば、週刊誌の編集者も天職だったのかもしれない。 (緋色の色彩は――存在するのかどうかの真偽はさておき――遺伝子的には優性なのか? だが、青色などは基本的に劣勢だし、紅い系統も劣性だろう。 とすれば両親ともが赤い目、もしくは隔世遺伝だとして、どちらの家系にも赤い目の因子を持っている可能性があるな。)
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