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無かったが、安物のは所詮安物の程度にしか防寒具としての役割を果たさないということらしい。
(金が無いわけでもなし、今度はちょっと高いのを買おう……。)
道路は兎も角、こと並木やガードレール付近に関して雪かきをこれからやろうという人は多くなく、少なくとも今晩中は灰色の町並みは純白のドレスで覆われるだろう。
雪なんて、どれ程振りだろう。
昔はよく駆け回って――――
「…………。」
牧山は頭を振って幼稚な考えを頭から一掃する。
雪がどうした。
電車は止まるわ道は歩きづらいわで、何一つ良い事なんか有りはしない。
今日だって、会社に遅刻しかけるハプニングがあったばかりだというのに。
(帰る手段はバスぐらいか……いや、バス停って面倒だから、タクシー使おう。)
家に着けば雪かきを手伝う羽目になるだろう。
安上がりのアパートだけに、近所の住人との人付き合いが億劫なぐらい付きまとう。
こんな風に積もったりして、大家の愚痴が少しでも短ければいいのだが。
「――はあ。」
溜息までもが白くされてしまうと、もうお手上げだ。
逆らう術が無いことを嫌でも思い知らされる。
近くの公園を通ると、牧山は何とはなしにそちらを見て立ち止
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