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まる。
「時間稼ぎでも――しようかな?」
家に帰るのを一時的に拒むために。
あわよくば、アパートの共同雪かきに参加しないで済む――――けれど、そうすると大家からの評価が下がるだけで実質的な価値はあまり無い。
雪かきとはいっても、筋肉痛になるほどハードではないのだし。単に面倒なだけだ。
(……帰るのが遅くなるだけか。)
頭で分かってはいても、思考が行動に関係するかどうかは別の話。
結局、牧山はそちらに入っていった。
そこは区営の小さな広場で、子供用の遊具は勿論、噴水などのオプションすらなかった。
ベンチが数個内部に配置されているだけの、外側に木が生えてる場所。
――要は、面白味や見栄えという点が著しく欠けている空間であった。
もし広い土地が有るなら、多少の救いはあるのに。
今は雪のおかげで美しい一面の銀世界――既にそれもかなり踏み荒らされてはいるが――の体裁を保っているような、情けない憩いの場。
牧山など、“こんな場所に金を使うぐらいならもっと僕の給金に回るような政策をして欲しい”と、つい身勝手なことを叫びたくなるぐらいだ。
無論、そこで叫べば子供で、叫ばないで黙秘するのが大人だと彼は知っていた。
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