絵描き少女。

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 病院内での生活に飽き飽きしていた僕は、ようやく慣れてきた車椅子を転がして敷地内の庭へと向かった。 入り口の自動ドアが開くと初夏の近づくなま暖かい空気が全身を包み、僕は眩しい直射日光に目を細めながら外へ出た。 病院を出てすぐ目の前にあった階段はたかだか3段しかなかったが、車椅子に乗った僕が降りるには少々難しかった。 四苦八苦して、それでも降りられなかった僕の後ろで、声が聞こえた。 「なにやってるの?」  透き通るような綺麗な声だった。 振り向いた僕の目に映ったその女の子は同い年くらいだろうか、肩にかかる長い髪を揺らしながら近づいてきた。 「この階段が降りられなくて……良かったら手伝ってくれない?」 僕がそう言うと、女の子は微笑みながらあっさりと承諾してくれた。 どうやって降ろしてくれるのかと思っていたら、僕の車椅子を引いて端の方へ押して行った。 「こっちにスロープがあるんだよ。……ふふ、車椅子で階段を降りようとする人なんて初めて見たかも」 車椅子を押してくれている彼女の表情は見えなかったが、僕は照れくさそうに鼻の頭をかいた。 その様子が可笑しかったのだろうか、僕はまた彼女に笑われてしまった。
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