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孫登の義母、徐氏の邸は郊外にあった。
離縁されたとはいえ、立派な邸でそんなには蔑ろにされていないということがわかって、周瑾はすこしホッとした。
ここまでくる数日はさほど危険なことはなく、いちおう賊が復讐してきたらとは警戒したけれど、そんなことは一度もなく狩りをする余裕すらあった。
「――さてと、無事についたし、親子水入らずしてきなよ。じゃ僕はこれで……」
「あ、まってくれ、子英!」
「たぁっ、いきなり袖を引っ張るなよ、義侠はさわやかに去るのが鉄則で」
「ぜひ、私の義母にあってくれないか」
「でも悪いし…それにここに来るまで護衛らしいことしてないしさ。賊もでなかったし、」
「でも帰りも護衛がいなくなったら不自然だろう? 母が心配する。――ね? いけないか?」
懇切丁寧に、しかも優しい声で請われて周瑾は折れた。
押しの弱い自分に内心いらだつけれど孫登の願いを無碍にできない。
「う…、わかったよ。……うん僕も旅でつかれたし、良い部屋案内してくれるだろうな?」
「ありがとう、子英」
孫登は本当に嬉しそうに微笑む。
「どうしたの、顔が赤い?」
「あ~…、いや~、なんでもない…」
「おかしな子英だ」
孫登はくすくすと笑った。
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