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☆
薬湯の臭いが漂(ただよ)い、部屋に近づくほど濃く、鼻につく。
周瑾は無意識に唇を噛んだ。
――ふと、母の泣き顔が脳裏に浮かんだから。
自分に泣きすがり願う母。
そして肩に食い込む爪と、媚びるような哀願。
それがいやで外に飛び出したというのに。
同じ臭いがここにも……。
――それにしてもなんで、薬の臭いが?
……ああ、そう言えば病気だったていってたな。
「子英?」
「あ、なんでもない」
考え込みいつのまにか距離が空いてしまって、周瑾はあわてて孫登の後をついていく。
柱廊を奥へと進むと主の閨の前についた。
「じゃあ、ここでまっていてくれ。挨拶をしてから呼ぶから」
「ん、わかった。僕にかまわないでゆっくりしてきなよ。久しぶりに会うんだろ?」
「ありがとう、」
孫登は階(きざはし)をのぼって扉をあけた。
室内はすべて暗幕で遮られ、扉を開けた分だけの光がさし込む。
「義母上、ただいま戻りました」
拝礼をして中に入っても返事がない。
「義母上?」
孫登は不安になって寝台をのぞいた。
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