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「義母上、お休みになられておられるのですか?」
頭から上掛けを被る義母みつけ、ほっと息をつき空気の入れ換えと明りを中にいれるため暗幕がかけられている窓縁に手にかけた時、つよく腕をつかまれた。
「ああ、やっと会いに来てくれたのですね!」
「!」
義母に突然抱きつかれ、孫登は驚いて、さらに首に絡む細い腕をはずそうと奮闘する間、唇を求められとっさに――パンっ、と母の頬を叩いた。
「やめてくださいっ、義母上!」
「――旦那さま、どうして?」
「……え?」
「ああぁ、なぜですの! せっかく会いに来てくださったのに、どうして私に冷たくなさるのですか! 捨て置いてくださればいいのにどうして会いに来られるのです! 私がいやなら殺してください!」
徐氏は手当たり次第物を投げつけて泣き崩れる。
孫登は呆然としたが物が胸にあたりハッと我に返って、徐氏の肩を優しく掴み顔をあげさせ、心苦しくなる。
以前よりくぼんだ瞳、痩けた頬……やせ細った義母――。
「義母上、私です、登です。あなたの息子です」
徐氏は、じぃ…、と見つめるが突然ころころ笑い、目を細めた。
「何をおしゃるの? 登さまはまだ幼くいらっしゃいますわ。からかうのはよしてくださいな」
「義母上、」
「私、あなたのために袍を縫いましたの。着てくれませんか?」
寝台の脇に折り目正しくたたんであった袍を、孫登の肩にそっとかける。
孫登は口の中で何かを呟いたが、それを飲み込み穏やかな言葉を紡いだ。
「ありがとう。秀瑛(しゅうえい)」
「あぁ、旦那さま……お似合いですわ」
しばらく孫登は父のふりをしてたわいない会話を交わした。
こうすることで義母の心を安らげられるとおもったからだ。
「秀瑛、熱があるね。――薬を飲んでしばらく休むといい。そばにいてあげる…から、ね」
義母に上掛けをかけて寝かしつける。
やさしく接せられて義母・秀瑛は嬉しそうに従い、薬を飲むとすぐにまとろみに落ちていった。
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