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「僕の母は父が死んでから気が触れてしまったんだ。僕を父と勘違いすることがある。……けれどまだ子高の母上と比べると良い方なのかも…まだ判別できるから。でも深く父の思いにしたって僕を見てくれないとき、子高のように父のふりをするんだ。
――記憶にない周瑜のまねごとを、……もちろん父のことなんてどんな人かあまり知らないから、いつも母上は不思議そうに言うんだ『おかしな公瑾さま』って。
でも笑ってくれるのが嬉しくて……その微笑みの先は幻の父で、僕に微笑んでくれなくてもね。今日……お前の母上が僕の母上と同じで驚いた。慰めの言葉なんて本当はないのかもしれないけど
――父のふりをしても罪ではないよ」
「子英…っ!」
孫登は周瑾にすがって嗚咽した。
抑えていた感情が溢れてとまらない。
義母への思慕、そして辛い気持ち…父になりきれない自分、自分だけを見て欲しいのに、見てくれなく悔しさ…。
(わかるから辛い、わかりすぎてしまう)
――周瑾は必死に涙を飲み込んだ。
ただ、一緒に涙するのはいやだった。
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