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「私の…せいだ、そばにいると約束したのに」
孫登は徐氏の手をとって慟哭した。
もう、その手は何も握り返してはくれない。
「義母上…義母上っ!」
孫登は母の亡骸にすがった。
秀瑛はふと目覚め、孫登が……孫権がいないことに悲しみ命果てた。
自分が恋想い見せた幻だと思ったのかもしれない。
それほど夫を思っているのに実際にはあえない苦しみから解き放たれるために自ら儚はかなくなったのだろうか。
孫登の慟哭は激しかった。
周瑾は為すすべもなく、ただその嘆きを黙って見守った。
――そばにいてあげよう。悲しかったら励ましてあげよう、僕にはそれしかできないから。
周瑾は孫登の喪もにつき合った。
最初のうちは暗くふさぎ込んでいたが、次第気持ちの整理がついたのだろうか……。
孫登はいつも周瑾にすまない、と詫び、その度に周瑾は微笑んだ。
「べつにかまわないよ、僕たち兄弟じゃないか、気が済むまで義母上のこと悼めばいい――義母上も報われるとおもうから」
「ありがとう、子英……」
――それから喪が明けて。
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