第一章・義母

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  6 「いってしまうのか?」  周瑾は馬の鼻を撫でながら頷いた。 「うん、予定より長い旅になってしまってそのことで僕の母上が心配しているだろうし。お前も建業に戻らないといけないんだろ?」 「ああ、……使者が来ている。子英、お願いだ。いつでも建業に遊びにきてほしい」  別れがたくて孫登は周瑾を抱きしめた。  力一杯の抱擁は華奢な周瑾の身体にはきつくて息が苦しい。 「子、子高、くるし…」 「――本当は離したくない。別れたくない。  悲しみにくれたときもそばにいてくれたただ一人の君を――義弟(おとうと)を」  周瑾もその抱擁を心地よいとおもったけれど、孫登の長い指先が胸にあたっておどろいてとっさに身体を押しやった。  ――って、バカ、ばれる! 「あは、じゃ、じゃあな、これ以上抱き合ってると妖しすぎ!」 「そうか? そういえば子英…君の用っていったいなんだったんだい?」 「ん? ああそんなのはもういいんだ。お前まで儚くなられたら堪らないから、……それに僕の用もほとんど成功したようなものだしな…」 「え?」 「だから! 子高に儚くなられちゃ、いやだったの。僕の用事なんてそれに比べたらちっぽけなものだよ、もともと半分家出のようなものなんだし」  周瑾は花が綻ぶように微笑むと、颯爽と馬にまたがって供手をした。 「じゃあ、登兄さん。またあう日まで。絶対、建業に遊びに行くから!」 「ああ」  周瑾は手を振って馬を駆った。
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