第一章・義母

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 邸(やしき)についたのは夜も深くなった時分。  久しぶりの我が家に戻って、深い感慨を覚えた刹那、怒声が降ってきた。 「薔妹(しょうめい)!」  待ちかまえていたのは周胤(しゅういん)。  松明に照らされている形相は鬼のよう。  いや門神というべきか。  ――せっかく二親から受けづいた美形が台無しだ。  と思いつつ、周瑾は慇懃無礼に頭を下げた。 「胤兄哥(あにうえ)。お久しゅうございます、お元気でした?」 「お久しゅうじゃない! おまえ、何ヶ月そとにでてたんだ!」 「え、半年ぐらい、かな?」  あっけらかんと応える周瑾の頭を容赦なく叩いた。 「いった~い! なんですぐ手をあげるの! そういうところ嫌い!」 「お前がバカだからだ! 女の癖くせして剣を持って放浪するなどと! どれだけ俺たちが心配して手を尽くしてさがしたか!」 「胤兄(いんにぃ)……」  周胤は周瑾を抱きしめた。  その抱擁はとても優しく、暖かい。  長旅の疲れの他に精神的な疲れも実感させられじぃん、と胸が熱くなる。  いろいろなことがありすぎた。  そしてその間、周瑾には甘えられる人がいなかった。 「バカが、心配したんだ……」 「ごめんなさい、胤兄」 「……おかえり、愛しい薔妹いもうと」  そう耳元でささやくと、身体をはなして背を向けた。照れくさかったらしい。
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