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邸(やしき)についたのは夜も深くなった時分。
久しぶりの我が家に戻って、深い感慨を覚えた刹那、怒声が降ってきた。
「薔妹(しょうめい)!」
待ちかまえていたのは周胤(しゅういん)。
松明に照らされている形相は鬼のよう。
いや門神というべきか。
――せっかく二親から受けづいた美形が台無しだ。
と思いつつ、周瑾は慇懃無礼に頭を下げた。
「胤兄哥(あにうえ)。お久しゅうございます、お元気でした?」
「お久しゅうじゃない! おまえ、何ヶ月そとにでてたんだ!」
「え、半年ぐらい、かな?」
あっけらかんと応える周瑾の頭を容赦なく叩いた。
「いった~い! なんですぐ手をあげるの! そういうところ嫌い!」
「お前がバカだからだ! 女の癖くせして剣を持って放浪するなどと! どれだけ俺たちが心配して手を尽くしてさがしたか!」
「胤兄(いんにぃ)……」
周胤は周瑾を抱きしめた。
その抱擁はとても優しく、暖かい。
長旅の疲れの他に精神的な疲れも実感させられじぃん、と胸が熱くなる。
いろいろなことがありすぎた。
そしてその間、周瑾には甘えられる人がいなかった。
「バカが、心配したんだ……」
「ごめんなさい、胤兄」
「……おかえり、愛しい薔妹いもうと」
そう耳元でささやくと、身体をはなして背を向けた。照れくさかったらしい。
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