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周薔は歌い、蹈鞴(たたら)を踏まず爪先だけで軽やかに踊る。
桃色の爪がひらひら花びらのように優雅にひるがえり、春風が被巾(ひれ)をふわりと持ち上げる。
裳もは風を孕み咲き誇らんとする華のよう。
天女が地に降りて舞遊ぶ。
歌声は空に透り、耳あたりが良い。
――これが周家の華
いまこの兄のためだけに舞ってくれると思うとこれほど至上なことはない。
これに長兄の技巧を凝らした琴があればこの上なく最高なのだが……。
周胤はうっとりと妹の艶姿あですがたをみつめ夢心地で酒を呑んでいたが。
嗚呼(ああ)、夫、天で妻を想い、
妻、天を見ず過去に想いはせる。
夫を我が子に重ね、夫を違え……。
その歌におもわず酒を吹き出し、妹をきつくにらむが周薔は無視して歌舞しつづける。
妻、子に敵をと、泣き崩れ
子、肯(うな)ずかん――。
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