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それから三ヶ月後――雲一つなく晴れ渡った空を見上げて、う…っん、と周薔は背伸びをした。
「よし、旅日和!」
周薔はきゅっと、荷物を胸元でしばると塀を飛び越え邸を抜け出した。
周胤は戦にかり出され、しばらく邸に戻ってくることは無い。そして家長である長兄はもとより建業住まい。家のことはよく心得た家人に任せてあるし、伯母上に書簡を送って母の様子をみてもらうように頼んだ。
伯母・香薔は母の病状のことをよく心得て、周家によくおとずれては母の心を安らげてくれる。
香薔は神秘的な雰囲気をまとっており、そして母のように愛する夫が不運にも亡くなっても正気をうしなわず、娘息子を一人で立派に育てた強い女性――周薔はとても憧れていた。
きっと策伯父上は伯母の気性を愛おしく思っていたにちがいない。
じゃあ、父さまは母さまのどこに惚ほれたのだろうか?
邸の門前が騒がしくなってふと目を向ける。
護衛を伴った馬車が周家に入ったのを確認して周薔は軽く頭を下げた。
「伯母上、後は頼みます」
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