第二章・周家の華

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   3  周薔――周瑾は建業にたどり着いた。  いつも長兄のもとに訪れるときは屈強な護衛兵を付けて馬車で行くのが常だったけれど、今回は再度挑戦の一人旅。  やっと建業まできたので、達成感で気持ちが高揚していた。  建業はほかの城市と比べて人の活気が満みちあふれている。  売り子の声や大道芸人たちの楽しげな声。  けれど戦の影が濃く、老人や女子供の姿が断然多い。  人々は戦の不安を払拭させようと必死に陽気に振る舞ってるだけかもしれない。  暗い部分を観察して少し高揚が冷めた。 「――にしても、どうやって入り込むか」  周瑾は城をみあげて首を傾げた。  この広大な城内に孫登がいる。  久しぶりに孫登に会うのだから。  ――印象的な再会じゃなくちゃ!  と、張り切っていたのに、どこもかしこも立派な甲冑をきこんだ衛士がうろついて入り込む隙がない。それに周瑾の美貌にちらちらと視線を投げつけてくる。そして怪しくおもったのか近づく気配があったので早足で城門付近からにげだした。 (むりだな、こりゃ……)  ふう…、とあきらめのため息をついたとき、見知った人物を偶然、発見した。  それは長兄――周循。
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