第二章・周家の華

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 けれど、久しぶりに会う兄はがっくりと肩をおとして人混みの中ふらふらあるいていた。  人と肩があたっても、あてられても、まるで幽鬼のように身体を小さくしてあやまるだけ。  周循に文句を言おうとした破落戸がその容貌を見ただけで罵声を飲み込み呆然とみおくる。  ほつれた前髪が女性的な美貌の影をつくり、平均男性より少々背が低く実際年齢五、六歳、ぎりぎりで十歳さばくっても通用してしまうほどの少年体型、それが周循。  とりあえず周瑾はタタッとかけて、バンッ、と気軽に背を叩いた。 「ヤ! 兄上!」 「あ…あ~…」 「えええええ! 兄上!」  どさっ…、と兄は派手に地面に突っ伏し、さすがに周瑾は驚き、悲鳴をあげて兄を揺さぶった。 「ど、どうしたの、兄上! ねえ!」 「――ふられた…」 「は?」 「本気だったのに…彼女のこと本当に好きだったのに遊びだったなんて、しかも大の大人を捕まえて『可愛かったの、そばに置いておきたかったの』って、なんだい僕は愛玩動物だったってことか…? ああ情けない…」  しくしくと泣き声に混じってそんなつことをぶやく。  ――なぁんだ、また女にふられたのか。 「兄上それって何回目?」  周瑾は同情をたぶんに含んで兄の肩を叩いた。
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