6/8
前へ
/103ページ
次へ
「はぁ~……」 腕立て伏せ旋回を百回やり終えて、とりあえずのつかの間の休息。 なんというか腕立て伏せ旋回をし終えたら気絶してしまって、気付いたらいつの間にか個人用の部屋に居て、その部屋のベットに寝ていたというね。何とも情けない話で、今しがた目を覚ましたという訳で。便意?そんなの記憶にございません。 「どーしよ……」 多分ここは俺の部屋になるとして(勉強机有り、ベット有り、空調設備有り)、有り余ると言っていい程の不安が有ったりする。 「荷物がない……あの二人以外にこの屋敷にはまだ何人かの人が居る……一ヶ月もここで過ごせる自信がない……生き残れない……」 ネガティブがネガティブを呼びさらにネガティブを増幅させてしまう。人見知りの悪い癖である。 窓から外を見れば既に夕方。荷物でぱつんぱつんのバッグの中にもしもの時の携帯食料やお菓子、勉強道具を混入させていたが、勉強道具以外もう亡き物として考えよう。 「ギュルルルルルルル~(これは俺の腹の虫の声であり、決してロリコンが幼女を目の前にしたときの獲物に対するそれではない)」 にしても腹が減った。アイムハンガリーだ。 今外を見て分かったが、ここはどうやら二階のどこかにある一室。もしここから出たら、見知らぬ誰かと遭遇なんてイベントが無い事もないわけで。 話せることは出来る。しかし人見知りとは、そこからの展開を恐れているのだ。嫌われたらどうしようとか、変に好印象を持たれたらどうしようとか。 これは正月に従姉妹が来た時に寝ているという嘘設定を作り、何も食わず、飲まず、誰とも話さず、ずっと自室に篭って、夜まで自室に居たという状況に似ているからタチが悪い。 しかし、そんな人見知りには嬉しい出来事が。 「榛名様。お食事が出来ました。下へ降りて来て下さい」 コンコンと部屋がノックされ、俺を呼ぶ割烹着先輩の声が聞こえた。何と言う安心設計!きっかけがあればちょろいもんよ。 「分かりました~すぐに行きます」 部屋のドアの前でドアノブを握りしめていた俺は言葉通りすぐにドアを開け、外界へと足を踏み込んだ。  
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

87人が本棚に入れています
本棚に追加