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「お待ちどーう!!」 満身創痍の状態で京都姉に引っ張られてガララと障子を開けて居間に連れて来られた時、既にテーブルの周りには幾人かが座っていて――食事待ち――その座っていた彼女達の視線が熊の人形のようにぐったりとしている俺とニコニコと屈託のない笑みを浮かべる京都姉にビシビシと浴びせられるのを感じた。 「おら!立てよ!男ならいかなる時もシャキッとしてろ!」 グイッと服の襟を持ち上げられ、強引に立たされてしまう。そのせいでか一瞬意識が飛び、おなじみエクトプラズマーが口から放出されようとしたが、京都姉はそれを鷲掴み、超人的パワーで俺の体内に押し戻した。 ありえねぇ……。 「はい!公橋 榛名(キミハシ ハルナ)18歳、高校三年でテニス部に所属してました!座右の銘は成せばなるです!京都姉とは親分と舎弟の関係であります!以上!」 エクトプラズマーに変な気でも流されていたのか俺は軍人並の正しい姿勢、はきはきとした声量、瞳孔の開いた瞳で自己紹介をしていた。 矢継ぎ早に京都姉が口を開く。 「ふん。よく言った舎弟。そしてみんな知っていると思うが私の名前は久野市 京都(クノイチ ミヤコ)。年齢は秘密。経歴も秘密だ。以上!」 やけにあっさりとした俺達の自己紹介が終わると、スッと割烹着先輩が立ち上がり淡々と言った。 「ようこそここまでいらっしゃいました。それではこの夏休みの間、結構相手を決める為にどうぞ悩み苦しんでくださいませ」 そう言い終えると、深々と頭を下げた割烹着先輩。 「……ホワイ?」 意味が分からない俺は目が点になった。ただただそれだけのこと。 まだ波乱に満ちた夏休みは始まったばかり……。  
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