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「この方の名前は――」 「べつに言わなくていいわ。無駄な知識となるでしょうから」 「でも……」 「あのお方も知りたくなさそうな歪んだ車体のような醜い顔をしていますし」 どういう顔だよ!?……にしても初対面からすごい言われようだ。 「これは義務です」 優子さんは一歩も引こうとしない。なんだか優子さんという人物に悪いような気がしていたたまれなくなった。気付けば俯いてしまう自分がそこには居る。 「……知らないわよ。そんな義務なんて」 「これは義務です」 「……勝手にすれば」 特に強く言っているわけでもないにも関わらず、あっさりと引き下がる彼女。そんななら初めから言わなきゃいいのにと思ったけど、何もしていない自分は何も言う権利はないわけで。 「それでは紹介させていただきます。この方は公橋 由璃愛(キミハシ ユリア)様です。ドイツ出身のドイツ人と日本人のハーフの方です」 「……ふん」 「…………」 どうして俺は彼女にこんなにも嫌われているのだろうか。まぁ敢えて苗字が同じ事には触れないでおこう。 「そして彼女の隣に座る方が雪葉 小町(ユキハ コマチ)様です」 「よ…よろしくお願いします」 「!?…こちらこそ、よ…よろしく」 全く気付かなかった。ユリアの陰に隠れて存在さえ分からなかった。言われて初めて気付いた感覚。小町ちゃんがまだ小さいからだろうか?いや、存在がなかった。……詮索するのはやめよう。あまり関わる事はない。 「そして彼女が公橋 愛歌(キミハシ アイカ)様です。もう一方おられるのですか今は部屋で休んでおられます。紹介はまた改めてさせていただきます」 「…………」 愛歌ちゃんは無表情のままこっちをちらりと見て、すぐにご飯へと視線を戻した。 「それでは夕飯を召し上がり下さいませ」 「は……はぁ」 何だか不安が更に募った気がした。いやいや、俺はただ受験勉強をするだけだ!頑張ろう!  
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