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「大喬……」
小さく悔しげに呟いて。
周瑜を大喬は見つめた。
周瑜は禍々しいものを見るような目で大喬をみやる。
「于吉仙人からすべてを聞いた。義姉上…いや大喬。そなたは伯符の願いをきいて側にいる、そしてその願いのかわりに命をうと……それは本当か」
「そのとおりだ」
いつもはお淑やかな喋りが尊大な口調となったことに周瑜は嘲笑をうかべ――そしてシュ……と剣を薙いだ。
その切っ先は大喬の喉一皮のところでとまっている。大喬はその間瞬きもしなかった。
「どうした、殺さぬのか?」
「一つ聞きたい。お前は伯符を愛しているか?」
「……もちろん。でなければ人の姿などまとわぬ」
――どうする。
周瑜は躊躇した。
ここで殺さねば孫策が死ぬ。
それは絶対に避けたい事だ。
けれどなおも避けたいことがある。
周瑜はきつく目を瞑り、剣をひいた。
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