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「大喬……」
孫策は大喬の髪をなぜた。
決して、悲しい表情を…涙を零した事のない社禝(女神)。
最期に見るなんて思っていなかった。
「泣くなよ。笑って」
「笑えぬ…妾は…そなたがいなければ笑えぬ」
「……ずっと、肉体がほろんでも側にいてやるから微笑んでくれ」
大喬は無理に笑ってみせた。
それで満足だった。
――最期に愛しいものの笑顔を刻んで死ねる事が。
孫策の腕が褥からおちた。
慟哭に満ちる室を大喬は颯爽と出てゆく。
…大喬の頬に一筋の涙がつたっていた。
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