香月

6/9
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
★ 「大喬……」  孫策は大喬の髪をなぜた。  決して、悲しい表情を…涙を零した事のない社禝(女神)。  最期に見るなんて思っていなかった。 「泣くなよ。笑って」 「笑えぬ…妾は…そなたがいなければ笑えぬ」 「……ずっと、肉体がほろんでも側にいてやるから微笑んでくれ」  大喬は無理に笑ってみせた。  それで満足だった。  ――最期に愛しいものの笑顔を刻んで死ねる事が。  孫策の腕が褥からおちた。  慟哭に満ちる室を大喬は颯爽と出てゆく。  …大喬の頬に一筋の涙がつたっていた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!