189人が本棚に入れています
本棚に追加
…*…*…*…
魔術師は協会本部たるビルに部屋を設けて暮らしている。管理という意味が強いのであろうが、ツカサは最上階に、ひときわ大きな部屋を与えられていた。
「…………」
ブーツすら脱がず、無駄にキングサイズのベッドに埋もれる。一日二連戦、しかも強力な術式を強いられたとなれば、一級魔術師と呼ばれていようがさすがに疲れる。
食事は済ませたが、シャワーはまだだ。汗が若干うっとうしくもあったが、起きてからで構わないだろう。そう考えて、ツカサは意識を手放した。
…*…*…*…
夢を見た。
彼女に手をひかれる夢だ。
白い光の満ちるセカイ。そこで、彼女はツカサを引っぱり走るのだ。太陽みたいな笑顔を彼に向けて。
ついていく自分はやっぱり無表情で。
でもどこか、今の自分よりは楽しそうに見えて――
…*…*…*…
――目覚めは強制的だった。
ツカサの部屋は、とある事情からつねに結界が張られている。つまり、この部屋は魔力のかき集められた状態なのだ。
周囲に魔力があるのはおかしくない。
だが――
「……なんだ、この魔力」
床に描かれた白い魔法陣。直径三メートルほどのそれを中心として、膨大な魔力が室内で渦を巻いている。
ツカサは魔力保有量が多い。というか、ツカサの用いる術式は魔力が多くなければそもそも意味をなさないような代物だ。そのツカサをしてこの魔力量は異常だと思える。
「くっ」
加えて、その干渉力も彼と同等、もしくはそれ以上だった。魂をじかに揺すられる苦鳴が、くちびるの端から漏れる。
最初のコメントを投稿しよう!