訪れる災厄

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「南館って……、ここだよな……?」  アレックスは友人に当然のことを確認する。 確認せずに、いられなかった。  すると、電子ホワイトボードに映し出された学校の見取り図に、点滅する赤い点が表示される。  その位置は、アレックスがいる教室の、真下を指していた。 「これ……、購買部行けないよな?」  アレックスは友人の言葉に、「いや、それどころじゃないから……」と、指摘を入れる。 「神谷くーん、あたしのお弁当わけてあげる!」  緊張感のないやり取りと、いまだに流れる校内放送のギャップが、アレックスの感覚を混乱させる。 「ていうかさ、なんかダウンロードしろって言ってるんだけどいいのかな?」  アレックスは手に持ったハンディーデバイスの、浮かび上がる文字を眺めた。  その時。 「ポン」という音をあげ、浮かび上がる[YES]の印しが点滅を始める。  そして僅かな間をあけ、アレックスを中心に、波紋が広がるように、その音が広がっていった。
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